Ty HassyのProgressive Innovation

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ウィキペディアにも載っていないハロウィンについての蘊蓄

 明日はハロウィンです。僕は日本ではハロウィンのイベントに参加した事はありませんし、今後もないと思いますが、その代わりハロウィンの起源については詳しいので、ここで少しばかりその蘊蓄を述べておきたいと思います。
 ウィキペディアではもちろん、他でもあまり見られない蘊蓄ですので、友達に鼻高解説できるかもしれません。

 人類の歴史をよーく調べてみると、ホモサピエンスが登場してからしばらくすると、自然神・精霊信仰が広がり、その後、農耕・牧畜をするようになるとそれらの生活手段をもたらしてくれた先祖を祀る「祖霊信仰」が一般的となりました。

 そして、キリスト教などの一神教が広がった地域以外では、それらの原始以来の習俗は残存し、今でもアフリカやアジアの辺境の地ではそのままの形で残存しています。

 祖霊信仰というと、どうしても東洋の風習のように思われている節がありますが、それは単に東洋の方が今でもそれが残存している地域が多いからに過ぎません。

 実は西アフリカのなどの辺境の地域でキリスト教イスラム教の影響が及んでいない地域ではいまだに祖霊信仰が行われているのであります。そして、その状況を事細かく調査報告した論文も出されている訳であります。それらを読むと、西アフリカの祖霊信仰の風習というものがアジアや日本に残存する祖霊信仰の風習と多くの共通性を持ち、発想も世界観もほぼ共通していることが良く分かります。

 祖霊信仰以前は、自然神・精霊信仰が原始人類共通のものでした。つまり、あらゆるものに神や精霊が宿るという信仰です。狩猟採取が主な生活手段であった原始人類にとっては自分たちの運命は自然の状態に大きく左右されることが多く、必然的にありとあらゆる自然物を拝むようになり、猟や採取の出来不出来も自然神や森の精霊のご機嫌次第と信じるようになったものと思われます。

 しかし、人類が農耕や牧畜を始めると、そのような新たな生活手段を子孫に継承していくシステム(日本ではそれを「家」と呼び、いわゆる家制度の元になっています)が確立され、そのシステムの管理運営者達が死後もそのシステムと子孫の存続繁栄を見守ってくれると信じられるようになりました。それが祖霊信仰の始まりです。

 そのような先祖によって開拓された耕作地や牧場を継承する子孫の義務は、そのシステムの創始者や代々の管理運営者を祀り、作物や家畜の安定した生育と自分たちの日々の生活の安全を祖霊に祈願することであり、祖霊はその祈願に応えるように、子孫のための安定した食糧供給と安全な生活が実現されるように常に見守って守護してくれるとされています。

 祖霊というのは一つの神的集合体であり、個々の先祖は時が経つにつれて、祖霊という集合体に融合します。しかし、子孫によって正しく祀られなかった先祖や事故や疫病などで死んだ先祖は祖霊には成れず、死後行き場が無くなって永遠に彷徨い続けることに成ります。そのような祖霊に成り損なった先祖は子孫にも作物にも災いをもたらすとして厄介者扱いされることになります。

 また、祖霊信仰の世界観では所謂あの世は存在せず、祖霊も、浮遊霊も精霊も全て我々と同じ世界に存在し、普段は、少しだけ人里離れたところにいるが、年に何回か人里に降りて来て人々と交流するとされています。

 日本の伝統で言えば、山の神も田の神も氏神様も年神様も全て祖霊の別名と考えてよいと思います。お盆も正月も本来は祖霊と人々との交流の日であったわけです。お盆は仏教の行事だと思われていますが、本来は仏教とは全く関係のないものです。中国も祖霊信仰の国であった為そこら辺で仏教と結びつけられたものと思われます。

 この人々と祖霊との交流の日には、先に述べた祖霊に成り切れずに行き場を失った浮遊霊達も一緒に参加しようとするため、日本でも全国各地で今でも悪霊退散のお祭りが行われています。あの悪霊とは、鬼と言われるものですが、鬼とは特に中国での元々の意味は死者の霊のことで、先に述べた祖霊に成り切れなかった浮遊霊のことを意味しています。

 そして、日本においては、精霊起源の災いをもたらす者や先の浮遊霊も全てまとめて鬼と言って、彼らを追い払う行事が数々あるという事です。節分の豆まきなどもその一つです。

 ということで、随分と前置きが長くなりましたが、本題のハロウィンは、ケルト民族の原始以来の精霊・祖霊信仰の宗教行事がキリスト教の影響力を掻い潜って現在まで生き残ったものと思われます。10月31日は彼らにとっては年末に当たり、年神様を迎えるにあたって一緒にやってくる悪霊たちを退散させるために、色んな格好をして彼らを驚かせて退散させようという趣旨です。そういう意味では、上記の日本の各地のお祭りの趣旨とほとんど同じであることが良く分かると思います。

 また、今ではキリスト教の行事日になってしまった11月2日の万霊節も、元は各民族の精霊・祖霊信仰の行事だったものが、キリスト教的に解釈変更されたものと思われます。

 従って、ハロウィンなどは、今でもアメリカの原理主義的なキリスト教教会では御法度となっており、熱心なキリスト教信者はハロウィン行事などに参加してはならないことになっております。

 ということで、日本はもともと元祖ハロウィンの国で、お盆も秋祭りも正月もみんな本来はハロウィンと同じ趣旨のものであったという事です。

 ただ、昨今の日本のハロウィンは元々コスプレ大国であった日本が、ハロウィンの時期に合わせて行うようになった新たなコスプレイベントとしての意味合いが強く、そういう意味では、欧米とは意味合いの違う独自の文化現象であると言えるかもしれません。